第11回
「今を生きる」ってどういうこと?
過去や未来にとらわれず、今を生きている人はすてきです。では、どうすれば、「今」に夢中になれるのでしょうか。
「今」を生きたい
「今を生きる」。よく聞く言葉ですね。耳ざわりがいいので、これを人生の目標にしている人もいるかもしれません。けれども、「言葉の意味はわかるのですが、具体的なイメージがつかめません。もっと詳しく教えてください」と聞かれたら、どのように答えますか。「今という瞬間は二度と来ない。あとで後悔しても遅い。だから、毎日を精一杯生きること」。こんなふうに言われれば、なんとなくわかったような気はします。けれども、膝を叩きたくなるような、もっと納得のいくコメントはないものでしょうか。
イラスト・三好 愛
過去や未来に生きる
たとえば、ここに「5分」という時間があるとしましょう。時間の過ごし方は人それぞれです。この5分間で、過去の思い出に浸ることも、未来を想像することもできます。過去も未来も、頭に思い浮かべることがポジティブなできごとであれば、懐かしい気持ちがよみがえる、あるいは期待に胸が膨らみ、幸せな気分に満たされるでしょう。しかし、ネガティブなできごとであれば、苦痛を覚え、不安や焦りや恐れでいっぱいになるかもしれません。
自分の感覚を知る
では、この5分間を「今」に費やすとしたらどうでしょうか。自分に備わっているさまざまな感覚をていねいに受け取ってみるのです。私たちには、目や耳、鼻、舌、そして触ることで感じられる五感があります。新鮮な空気、爽やかな風、温かい日差しなどを受け取る感覚もあります。それ以上に大切にしたい「感情」もあります。感情は、「愛」につながります。私を愛する。あなたを愛する。ほかにも、体を動かす気持ちよさ、声を出す心地よさなど、言葉では言い表せない気持ちもあります。
心に寄り添って行動する
その上で自分の心に寄り添った決断や行動をすれば、自分の意志を尊重できたことに喜びを覚えるでしょう。体を動かすことが気持ちよければ、お掃除だってストレス解消になります。ふと眠くなったとき、だれにも気がねせずうたた寝できれば最高に幸せです。こんなふうに、自分に備わっている感覚や感情に焦点を当てれば、たくさんの満足感、充実感、幸福感を発見するでしょう。まさにこれが、「今に生きる」ということではないでしょうか。
石原加受子(いしはら・かずこ)さん
心理カウンセラーの石原加受子さんが、迷い、悩む大人の心に寄り添います。
心理カウンセラー。心理相談研究所「オールイズワン」代表。「自分を愛し、自分を開放し、もっと楽に生きる」ことを目指す「自分中心心理学」を提唱。仕事や家族、人間関係に悩む人に向けたセミナーやカウンセリングなどを30年続けている。「誰にも言えない『さみしさ』がすっきり消える本」(SBクリエイティブ)「やっかいな人から賢く自分を守る技術」(三笠書房)など著書多数。文庫化された本や翻訳本も含めると200冊以上を出版している。日本カウンセリング学会会員。日本学校メンタルヘルス学会会員。厚生労働省認定「健康いきがいづくり」アドバイザー。