座位時間が長い人は、そうでない人と比較して病気になるリスクが高く、死亡率にも影響していることが、近年の研究で明らかになっています。座位時間が長い日本人の現状と対策について、早稲田大学スポーツ科学学術院教授 岡浩一朗先生にお伺いしました。
ー まず、先生のご専門の研究について教えてください。
運動が健康に良いと分かっているのに運動をしなかったり、食べ過ぎは体に悪いと分かっているのに食べ過ぎてしまったりすることがあります。
このように、人はなぜ「良い」と分かっているのにそれをしないのか、「悪い」と分かっているのにやってしまうのか、その原因を探ることに興味があり、行動科学の分野で「行動変容」の研究をしています。
これまで、健康のために運動やスポーツに勤しむことを促す研究に携わってきましたが、私が興味を持っているのは「人はなぜ、運動やスポーツをしないのか」という原因の究明です。ですから、アウトカムを「健康状態」ではなく、「行動」にして、何にどのようにアプローチすれば、その人の行動変容を促せるかを研究するようになりました。
日常的にアクティブに行動するために、当初は、「何とかやる気にさせよう」、「自信を高めよう」といった心理学的なアプローチが中心だったのですが、それだと始めることはできても長続きしません。
タバコやお酒のような不健康行動の場合、「やめる」という明確なゴールがあれば、それを達成できた時点で終わりですが、身体を積極的に動かす習慣や健康的な食生活のように、「生涯続けなくてはならない行動」には終わりがありません。やる気だけで、終わりがない行動を長続きさせるのは至難の業なのです。
人の(不)健康行動の多くは自動化されており、環境の影響が大きいことが分かっています。たとえば、駅で上りの階段があれば、階段を使ったほうが健康にいいと分かっていたとしても、自動的に身体がエスカレーターに向いてしまうことがありますよね。人の行動はやる気や気持ちだけでなく、さらされている環境との相互作用で決まるのです。

気持ちと環境の両面から解決しない限り、人の行動変容を考えていくのは難しいと気づき、身体活動を支援する環境についての研究も深めてきました。
世界規模で1xbet 철수が蔓延
ー 先生は1xbet 철수について研究されています。実際、昔よりも座る時間は長くなっているのでしょうか。
明らかに座る時間が長くなっています。仕事中はずっとパソコンの前に1xbet 철수、余暇は1xbet 철수ながらテレビを見たり、スマホでSNSを閲覧したり、ゲームをしたり。電車でも我先にと空いている席を探しに行きますよね。
余暇に運動やスポーツをする運動習慣者が減っているわけではありません。しかし、一日の歩数はどんどん減少傾向にあります。おそらく、仕事や家事の場面での身体活動、特に低強度の活動(ちょこちょこと動く)が減り、座っている時間が長くなっていることが背景にあると思います。

1xbet 철수の人が増えた要因のひとつが、電化製品や通信機器の発達でしょう。たとえば、昔のオフィスは何かと不便でした。資料をコピーして配って回ったり、決済をとるために担当部署のところに歩いて行ったり、必然的に動かないといけない環境だったのです。しかし、現代は、パソコンやスマートフォンを1人1台持つようになり、座りっぱなしでも事足りるようになっています。
家の中でも1xbet 철수ています。数十年前のテレビはリモコン式ではなく、いちいち立ち上がってチャンネルを変えなければいけませんでした。また、電話は固定式だったので、かけるときもかかってくるときも、電話機のあるところまで歩いて行かなければなりませんでした。世の中が便利になったことと引き換えに、私たちは身体を動かす機会を奪われ、活動量は確実に減少しています。
ー 特に日本人は1xbet 철수と聞いたことがありますが、実際、座位時間は長いのでしょうか。
研究によると、日本人は起きている時間の8~9時間は座っていることが分かっており、とりわけデスクワークの人は座っている時間が長い傾向があります。
成人が起きている時間のなかで、健康づくりに良いとされている中高強度の身体活動はわずか5%程度。そのほかの95%は座っているか、寝ているか、“ちょこちょこ”と弱い強度で動いているかだと言われています。
2011年の研究で、世界20カ国のなかで、1日の総座位時間が最も長かったのは日本人でした。その後、10年たった今も日本人の座位時間が長いことに変わりありません。では、他国より飛びぬけて長いかといったら、そうでもなく、先進国、発展途上国も同じような水準であることが報告されつつあります。つまり、世界的に1xbet 철수が蔓延しており、大げさではなく地球規模で解決すべき課題だと考えています。

- 出典:Bauman AE.Ainsworth B.,Sallis j.et al.The descriptive epidemiology of sitting:A 20-country comparison using the lnternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ).Am J Prev Med 2011;41:228-235.より作成
1xbet 철수は病気のリスクを高める
ー 1xbet 철수は病気のリスクが高まるといわれています。
では、どれくらい座っていると健康障害につながるのでしょうか。
「1xbet 철수」の定義についてはまだ十分にコンセンサスがえられていないのですが、座位行動と死亡リスクに関する世界中のデータをまとめた研究によると、座っている時間が6時間を超えたあたりから、死亡リスクが高まり、8時間以上になると急激に高くなることが分かってきています。そういったことから、おおよそ8時間が目安になると考えられています。
ー 1xbet 철수は、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。
1xbet 철수っぱなしで仕事をすることで、腰痛や肩こりになることは、以前からいわれていることです。日本人の不定愁訴(原因がはっきりわからないけれど、なんとなく体調が悪い状態)は、1番、2番が腰痛と肩こり。昔より、イスの1xbet 철수心地は良くなっているのに、一向に腰痛も肩こりも減っていません。むしろ、1xbet 철수心地がいいので、1xbet 철수っぱなしを助長しています。

では、良い姿勢で座ればいいのかというとそうとも限りません。たとえば、「良い姿勢で座る」というと、イスに深く1xbet 철수、背筋を伸ばして骨盤を立てて座るイメージがあります。しかし、このような姿勢を長時間続けていると、太ももの付け根にある鼠径部が詰まりやすくなるし、太ももの裏も圧迫されて血流が悪くなる傾向があります。ふくらはぎの働きで心臓に血液を戻そうとしても効率的に送ることができず、血圧も高くなるような状態になるでしょう。
俗に言うどんなに良い姿勢で座っているからといって、それを長時間続けていいはずがないのです。
オーストラリアのシドニー大学が中心になって行った調査によると、1日の座位時間が4時間未満の人と比べて、1日8時間以上座っている人は15%、11時間以上になると40%も総死亡リスクが高かったという結果が報告されています。

- 出典:Van der Ploeg HP,Chey T,Korde RJ, et al.Sitting time and all-cause mortality risk in 222,497 Austrian aduits.Arch lntern Med 2012;172:494-500.

また、1xbet 철수は、がんのリスクを高めることも明らかになっていて、とりわけ結腸がんや乳がんの発症とは高い関連性があることが示されています。
1xbet 철수は脳の血流を悪くするといわれ、子どもの認知機能の発達にも悪影響を及ぼすことが懸念されています。最近の大規模なコホート研究では、1xbet 철수が認知症の発症につながるという確かなエビデンスも出てきています。
その他、1xbet 철수とメンタルヘルス(不安や抑うつ)の関連性も注目されています。じっと座っていたら、生き生きとした気分や感情が生まれず、さらに仕事で強いストレスにさらされていれば、メンタルヘルスの問題にもつながる可能性は十分にあるでしょう。
ー 1xbet 철수が健康障害を引き起こすのはなぜなのでしょうか。

下肢には全身の筋肉の約70%があり、特に太ももの前面には最も大きな筋肉があります。筋肉にスイッチが入ると(筋活動が盛んになると)、糖代謝や脂肪を分解する酵素の働きが活発になり、エネルギー消費が高まります。
しかし、1xbet 철수っぱなしで下肢を動かさないと筋活動がともなわず、代謝が悪くなることで、肥満、高血圧、血糖値上昇、脂質異常など、メタボリックシンドロームのリスクが高まり、心臓病や脳卒中、がんなどの大きな病気につながる可能性もあるのです。
子どもの頃の習慣は大人になっても受け継がれる
ー アスリートも1xbet 철수に気をつけるべきでしょうか。
いろいろなアスリートがいますが、かなり強度の高い運動を長時間しているのであれば、1xbet 철수の悪影響はある程度相殺されるというのが、世界的な見解になっていると思います。しかしながら、アスリートは生涯アスリートではありません。引退後に1xbet 철수なライフスタイルを続ければ、健康障害を起こすリスクがあります。
大学のスポーツ選手も同じで、学生時代は脳が筋肉になるくらい運動をしていたのに、卒業後、社会人になってライフスタイルが大きく変わったら、肩こりや腰痛に悩まされるようになったという声もあります。ですから、アスリートや大学生であるうちから、1xbet 철수の弊害を理解してもらい、近い将来の生活に役立ててもらわないといけないと思っています。
ー 最近は子どもも1xbet 철수だと思いますが、大人と同様に気をつけるべきでしょうか。

特に、子どもの1xbet 철수は大きな問題だと思います。大人は自分の意思で1xbet 철수を解消できますが、子どもの場合、じっと座っていることが「お行儀が良い」とみなす文化が日本にはあるのではないでしょうか。
日本では、45分間の授業を座ったまま受けるのが当たり前になっていますが、海外ではなぜ国語や算数の授業中に座らなければいけないのか、別に立ってディスカッションをしながら学んでもよいのではないかということを真剣に議論しています。
保護者や先生が1xbet 철수のリスクを知って子どもたちへの悪影響を軽減するために、本当に授業中、座り続けなければいけないのか、授業のやり方を考え直すことも必要だと思っています。
重要なのは、子どもの1xbet 철수の習慣はそのまま大人に持ち越されるということです。ですから、子どもの頃から1xbet 철수の問題を理解し、1xbet 철수ない生活習慣を促すことが重要なのです。今の日本では、長時間座っていることを悪いと思わないし、それが当たり前の感覚になっていると思います。いちいち立たなくても事足りる時代になっていますし、座って楽しめるエンターテイメントも増えており、子どもにとっての1xbet 철수も深刻な問題だと思います。子どもの頃からしっかり足腰を鍛えて、座位時間を減らす取り組みが重視されるべきでしょう。
週末に少しくらい運動しても、1xbet 철수のリスクは相殺されない
ー 座りっぱなしではなく、こまめにブレイクを入れれば1xbet 철수のリスクが低下するでしょうか?

最近は、1xbet 철수(長時間の座位行動)と同時に、座りっぱなし(ずっと座り続けること)も問題視されてきています。
トータルの座位時間は同じでも、連続して座るか、こまめにブレイクしているかで、健康に及ぼす影響は違うのではと指摘されるようになってきたのです。
ある実験で、「1xbet 철수っぱなし」、「30分に1回3分間のブレイク(高強度の活動)」、「30分に1回3分間のブレイク(低強度の活動)」の3つの条件を遂行してもらい、その際の血糖値を比較したところ、1xbet 철수っぱなしの条件では数値は悪く、ブレイクを入れた人は、活動の強度にかかわらず、数値が20%くらい改善されることが分かっています。
つまり、活動の頻度さえ多ければ、強度にかかわらず、健康指標の改善度は大きく変わらないということです。これは、1xbet 철수対策の大きなポイントになります。
ー 週末だけスポーツをし、平日は座る時間が長い場合はどうでしょうか。
平日は1xbet 철수の毎日を過ごしているけれど、休日には罪滅ぼしのように運動をする人もいるのではないでしょうか?このような人々を、我々は「週末戦士(ウィークエンド・ウォーリアー)」と呼んでいます。また、日頃少し運動はしているけれども、それ以外の時間は家でずっとソファに座って過ごすことが多いような人々を「アクティブ・カウチポテト」と呼ぶことがあります。

もちろん、週末戦士やアクティブ・カウチポテトは、何もしないよりは断然良いですし、死亡リスクが低下することも証明されています。しかし、平日の睡眠不足を休日にまとめてとる「寝だめ」が睡眠不足の解消にならないように、1xbet 철수の悪影響は少しくらい運動したからといって十分に相殺できません。ある程度運動していたとしても、それ以外の時間の1xbet 철수を減らさないと、やった運動の効果が最大化されないのです。
重要なのは、1xbet 철수をやめるための新しい生活習慣をいかに形成できるかが、現代人の大きな課題といえるでしょう。
「運動習慣を身に付ける支援」と「1xbet 철수を減らすサポート」は、決してイコールではありません。運動するように仕向ければ、1xbet 철수は減ると思われがちですが、結局、座っている時間は変わらないのです。そのため、1xbet 철수ない社会に変えていくためにも、1xbet 철수・座りっぱなしに特化した研究をさらに本気でやらなければと思っています。

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